労務・社会保険Q&AReference
【労働者派遣法】有期雇用派遣労働者に対する派遣期間の制限と雇用安定措置
2015年に改正された労働者派遣法が施行後3年を経過し、今年の10月から有期雇用派遣労働者への派遣期間の制限と雇用安定措置が適用になりますが、派遣先・派遣元事業所における留意点等について教えて下さい。
(1)派遣期間の制限
派遣元に期間の定めのある労働契約で雇用されている有期雇用派遣労働者については、
①派遣元が同一の派遣労働者を派遣先の同一の組織単位に継続して派遣できる期間は3年とする。
かつ
②派遣先が同一の事業所において、労働者派遣を受け入れることができる期間は3年とし、派遣先がこれを超えて継続して労働者派遣を受け入れようとするときは、この延長のたびに(延長の上限期間はその都度3年)、派遣先の過半数労働組合等から意見を聴取し、異議が述べられたときには延長の理由等を説明しなければならない。
(2)雇用安定措置
有期雇用派遣労働者が派遣先の同一の組織単位の業務に3年間従事した場合、派遣元は、当該有期雇用派遣労働者に対し、以下のいずれかの措置を講じなければならない。
①派遣先への直接雇用の依頼
②新たな派遣先での就業機会の提供(その条件は合理的なものに限る)
③派遣元での無期雇用の機会の提供(派遣労働者以外の労働者としての雇用)
④その他教育訓練であって、雇用の安定に特に資すると認められる措置
※厚生労働大臣は、この義務に違反する派遣元事業主に、指導・助言・指示を行うことができ、この指示にも違反する場合には労働者派遣事業の許可を取り消すことができる。
【労働契約法・労働安全衛生法】安全配慮義務
今年は梅雨明けが早く、暑い日々が続いており、従業員の熱中症が心配です。作業現場での労働災害防止はもとより、日々の健康管理にも留意しなければなりませんが、使用者の安全配慮義務について教えて下さい。
(1)労働契約法
労働契約法第5条では「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定されており、使用者には就業場所や使用する設備・機械器具等の管理、使用者の指示の下で労務を提供する過程において、労働者の身体や生命を保護するように配慮し、安全を確保すべき義務があります。
(2)労働安全衛生法
労働安全衛生法第3条第1項では「事業者は単にこの法律で定める労働災害防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」と規定されており、以下の内容を定めています。
①安全衛生管理体制、②危険・健康障害の防止措置、③機械・有害物などに関する規制、④労働者の就業に当たっての措置、⑤健康の保持増進のための措置、⑥快適な職場環境の形成のための措置 など
※安全配慮義務違反の場合
・(労働契約法)労働契約に付随する安全配慮義務を使用者が怠り、労働者の身体や生命に損害が発生した際には、債務不履行を原因とする損害賠償の支払いが生じる場合があります。
・(労働安全衛生法)義務規定違反が発生した際には、労働基準監督官による行政指導や刑事罰が科される場合があります。
【労働契約法】不合理な労働条件の禁止
正社員と非正社員の待遇の違いが「不合理な格差」にあたるかどうかの訴訟が各地で起きていますが、労働契約法第20条の期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止とはどのような内容ですか?
労働契約法第20条では「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めのあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という)、当該職務の内容及び配慮の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」としています。
無期契約労働者(正社員)と有期契約労働者(非正社員)とに労働条件の格差があった場合には、以下の要素を考慮して、不合理なものであると違法になるという内容です。
- 業務の内容及び当該業務の責任の程度
- 職務内容及び配置変更の範囲
- その他の事情
【労働基準法】就業規則
就業規則の作成義務は?
労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成しなければならないとしており(第89条)、違反した場合、30万円以下の罰金に処せられます。(第120条)
「10人以上」かどうかの適用単位は事業所単位であり、「労働者」には使用者が労働契約を結ぶ全ての労働者が含まれますので、正社員のみならず、契約社員やパートタイマーなど非正規雇用の労働者も含まれます。したがって、正社員についての就業規則を、契約社員やパートタイマーに適用させるつもりがないにもかかわらず作成していないという場合には、労働基準法違反となります。
なお、同一事業場において、一部の労働者についてのみ適用される別個の就業規則を作成することも可能です。(契約社員就業規則、パート社員就業規則等) この場合は、就業規則本則において、別個の就業規則の適用対象となる労働者に関する規定を設けることが望ましいとされています。
【労働基準法】時間外・休日労働
36協定に定めている限度を超える見込みです。特別条項を締結していないが、協定上限に達した場合、日曜日に出勤を求めることができるのでしょうか?
36協定は適法に行わせることができる時間外等の枠を定めるもので、「業務上必要ある場合(非常災害時等の時間外労働を除く)」であっても、労働時間の延長は認められません。限度時間を超えるおそれのある場合は特別条項を付加する等の形で協定を見直し、事前に労働基準監督署へ届け出るのが基本です。36協定では、時間外労働の延長限度と休日出勤数を定めます。日曜が法定休日日に該当すれば、その日の労働時間は「別管理」となります。ただし、特別条項での上限設定についても、現在、国会で議論されている「働き方改革関連法案」では、上回ることの出来ない上限を設けるとともに、違反した場合の罰則規定を設けて、強制力を持たせる内容となっています。