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社会保険労務士・行政書士 今井まさみ事務所

労務・社会保険Q&AReference

new 介護離職の防止

近年、育児・介護休業法も頻繁に改正され、令和7年4月及び10月施行の改正内容も国から紹介されています。今後、増えてくることが予想される介護離職の防止に向けて、介護の現状や両立支援制度等の概要、今回の法改正に伴い会社が取り組まなければならない措置内容等について教えて下さい。

A 介護離職防止に向けた取組について

1 介護離職の現状

(1)家族の介護・看護を理由とする離職者数の推移

家族の介護や看護を理由とする離職者数の推移(総務省「就業構造基本調査(5年に1度の調査)」をみると、平成19年約14万4千人、平成24年約10万1千人、平成29年約9万9千人と減少傾向にあったものの、直近の令和4年は約10万6千人と増加している。                                                また、男女の比率を見ると、男性の割合は平成19年約17.7%、平成24年19.7%、平成29年24.2%、令和4年24.7%と上昇傾向にある。

(2)家族の介護・看護を理由とする離職者の年齢構成

家族の介護・看護を理由とする離職者は、50歳から64歳で多く、65歳以上も23.2%存在している。

(3)家族の介護をしながら就業する者

家族の介護をしながら就業する者の推移(総務省「就業構造基本調査」)をみると、291.0万人(平成24年10月)⇒346.3万人(平成29年10月)⇒364.6万人(令和4年     10月)と増加している。

(4)介護休業等両立支援制度の利用の現状

介護をしている雇用者(約322万人)について、介護休業等制度利用の有無や制度利用者の種類別の人数や割合を見ると、「介護休業等制度の利用あり」の者は372万3千人(11.6%)で、このうち「介護休業」の利用者は5万7百1千人(1.6%)、「短時間勤務」7万4千9百人(2.3%)、「介護休暇」14万4千8百人(4.5%)、残業免除2万4千4百人(0.8%)、その他となっている。                                                                                         また、雇用形態別の利用割合をみると、「介護休業等制度の利用あり」の者は、「正規の職員・従業員」で15%である一方、「非正規の職員・従業員」は8.7%となっている。

介護休業等制度利用の有無

介護休業等制度の種類           雇用形態

介護をしている
 

総数

 

制度の利用

なし

制度の利用あり
総数 制度の種類
介護

休業

短時間

勤務

介護

休暇

残業

免除

その他
 人数(千人):割合(%) 雇 用 者

(割合)

3,219.5

(100)

2,819.9

(87.6)

372.3

(11.6)

50.7

(1.6)

74.9

(2.3)

144.8

(4.5)

24.4

(0.8)

140.6

(4.4)

正規の職員・従業員

(割合)

1,567.8

(100)

1,321.9

(84.3)

234.8

(15.0)

33.5

(2.1)

33.1

(2.1)

106.0

(6.8)

13.2

(0.8)

91.6

(5.8)

非正規の職員・従業員

(割合)

1,413.8

(100)

1,276.8

(90.3)

122.3

(8.7)

15.6

(1.1)

37.5

(2.7)

37.0

(2.6)

11.1

(0.8)

39.2

(2.8)

厚生労働省資料「育児・介護休業法等の改正について」(【出典】総務省「就業構造基本調査」令和3年10月から令和4年9月の離職者)より作成

2 仕事と介護の両立支援制度等の概要

介護休業 ・要介護状態(※1)にある対象家族(※2)を介護する労働者が、介護の体制(介護サービスの手続き等も含まれる)を構築して働きながら対応できるようにするために一定期間休業する制度。対象家族1人につき、通算93日、3回まで分割可能。 (取得例)3回取得
介護休暇

 

 

 

・日常的な介護のニーズ(通院の付き添い、ケアマネジャーとの打合せ等)に対し、スポット的に対応するための休暇制度。

・介護終了まで年間5日(対象家族が2人以上は10日)

・時間単位で取得可能

(令和7年4月1日より、労使協定の締結により除外できる対象者ついて、継続雇用期間6か月未満の者を撤廃 )

(取得例) 労働時間1日8時間

介護休暇(1日)

介護休暇(1日)

介護休暇(1日)

介護休暇(4時間)

介護休暇(4時間)

介護休暇(1日)

所定外労働の免除(残業免除) 就業規則等で定める労働時間外の労働(所定外労働)を免除 1回の請求つき、1か月以上1年以内の期間で介護終了まで

何回でも請求可能

時間外労働の制限(残業制限) 法定労働時間(1日8時間、週40時間を)超える時間外労働について、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限 1回の請求につき、1か月以上1年以内の期間で、介護終了まで何回でも請求可能
深夜業の制限 午後10時から午前5時までの深夜業を制限 1回の請求つき、1か月以上6か月以内の期間で、介護終了まで何回でも請求可能
選択的措置義務(短時間勤務制度ほか) 介護と仕事の両立を容易するため、下記のいずれかの措置を事業主が選択して実施

①  短時間勤務制度(1日8時間勤務を6時間勤務に短縮など)、②フレックスタイム制、③始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、④労働者が利用する介護サービスの費用の助成等

対象家族1人当たり、利用開始日から3年の間で2回以上

※1 要介護状態とは、常時介護を必要とする状態のことで、介護保険制度の要介護状態区分において、要介護2以上であるなどの状態が2週間以上にわたること。

※2 対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫。現行の基準が主に高齢者介護を念頭に作成されていることから、子の介護は対象にならないと誤解するケースもあり、厚生労働省では、「常時介護」に関する判断基準を改め、障害のある子や医療的ケアが必要な子も対象になり得ることを明確にする方針。

3 介護離職防止ための支援の強化(改正育児・介護休業法:令和7年4月1日施行)

今回の法改正により、事業主に義務付けられる介護に関する措置内容

(1)介護休業と介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、下記のいずれかの措置を講じなければならない。(複数の措置を行うことが望ましい)。

①介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施

少なくとも管理職は、研修を受けたことがある状態にする。

②介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口の設置)

相談窓口の設置や相談対応者を置き、これを周知する。

③自社の従業員への介護休業・介護両立支援制度等の取得事例の収集・提供

取得事例を収集し、これらを掲載した書類の配布やイントラネットへの掲載など

④自社の従業員への介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知

介護休業・介護両立支援制度等の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットに掲載することなど

(2)介護離職防止ための個別の周知・意向確認

①対象者 介護に直面した旨の申出をした従業員

②周知事項  ア 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(上記2の内容)、イ 介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:総務部など)、ウ  介護休業給付に関すること

③個別周知と意向確認の方法 ア 面談、イ 書面交付、ウ FAX エ 電子メール のいずれかの方法(アはオンライン面談も可能、ウ・エは従業員が希望した場合のみ。)

(3)介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供

40歳は介護保健制度に加入(第2号被保険者)し、介護保険料の徴収が始まる時期。また、障害のある子や医療的ケアが必要な子などの介護支援にも利用できることも。

① 情報提供期間 ア 従業員が40歳に達する日の属する年度(1年間)又は従業員が40歳に達した日の翌日から1年間

② 情報提供事項   ア 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等、イ 介護休業・介護両立支援制度等の申出先、ウ  介護休業給付に関すること

③ 情報提供の方法 ア 面談、イ 書面交付、ウ FAX エ 電子メール のいずれかの方法(アはオンライン面談も可能)

 

4 国等の財政的な支援制度

(1)介護休業取得者への休業期間中の所得補償

雇用保険の被保険者が対象家族を介護するために介護休業を取得した場合、一定要件(介護休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月以上必要)を満たせば、介護休業期間中に休業開始時賃金月額の67%(手取り8割相当)の介護休業給付金を介護休業取得者に支給

(2)事業主への財政的な支援

①雇用保険(国)の「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」

介護休業の取得・職場復帰に取り組み、介護休業を取得した労働者が生じた又は介護のための柔軟な就労形態の制度の利用者が生じた中小企業事業主に支給

②東京都「介護休業取得応援奨励金」(令和7年度も継続の予定)

従業員に介護休業を取得させるとともに、介護休業期間の延長などの職場環境を整備した都内中小企業事業主に支給

new 精神障害の労働災害について

心理的な負荷による精神障害の労働災害も増えていると聞いており、その認定基準の内容や精神障害の労災発生予防に向けた対応について教えて下さい。

1 精神障害の労災認定について

(1)精神障害の労災補償状況(令和5年度「過労死等の労災補償状況」|厚生労働省 (mhlw.go.jp) )

令和5年度過労死等の労災補償状況 別添資料2「精神障害に関する事案の労災補償状況」(単位:人)

 

区 分

年      度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度 令和5年度
精神障害注1

 

請求件数 2060 (   952 ) 2051 (    999 ) 2346 ( 1185 ) 2683 ( 1301 ) 3575 ( 1850 )
決定件数

注2

1586 (   688 ) 1906 (    887 ) 1953 (   985 ) 1986 (   966 ) 2583 ( 1283 )
うち支給決定件数 注3 509 (   179 ) 608 (    256 ) 629 (   277 ) 710 (   317 ) 883 (   412 )
[認定率]注5 [32.1%] ( 26.0% ) [31.9%] ( 28.9% ) [32.2%] ( 28.1% ) [35.8%] ( 32.8% ) [34.2%] ( 32.1% )

注1 本表は労働基準法施行規則別表第1の2第9号に係る精神障害について集計したものである。 注2 決定件数は、当該年度内に業務上又は業務外の決定を行った件数で、当該年度以前に請求があったものを含む。 注3 支給決定件数は、決定件数のうち「業務上」と認定した件数である。 注4 複数業務要因災害として決定した事案は、上表における決定件数の外数である。 注5 認定率は支給決定件数を決定件数で除した数である。 注6 ( )内は女性の件数で内数である。なお、認定率の( )内は、女性の支給決定件数を決定件数で除した数である。

(2)精神障害の発病についての考え方(精神障害の労災認定(001168576.pdf (mhlw.go.jp)参照)

精神障害の発病については、下記の①、②、③の要因による

① 業務による心理的負荷 「業務による心理的負荷評価表」(別表1)

例 事故や災害の体験、仕事の失敗、過重な責任の発生、仕事の量・質、対人関係、役割・地位の変化 等

② 業務以外の心理的負荷「業務以外の心理的負荷評価表」(別表2)

例 自分の出来事、家族・親族の出来事、金銭関係、事件、事故、災害の体験 等

③ 個体側要因(個人のストレスに対する反応しやすさ)

・既往や治療中の精神障害、アルコール依存症等の存在が明らかな場合には、その内容等を調査

(3)精神障害の労災認定要件

①認定基準の対象となる精神障害を発病していること

認定基準の対象となる精神障害は、疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂版( ICD- 10 ) 第Ⅴ章「精神及び行動の障害」に分類される精神障害であって、認知症や頭部外傷などによる障害及びアルコールや薬物による障害は除かれる。業務に関連して発病する可能性のある精神障害の代表的なものは、うつ病や急性ストレス反応などがある。

②認定基準の対象となる精神障害の発病前概ね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。

「業務による心理的負荷評価表」(別表1)により「強」と評価される場合は、認定要件の②を満たす。具体的な評価手順は、次のとおり。

ア「特別な出来事」に該当する出来事がある場合

「特別な出来事」に該当する出来事が認められた場合には、心理的負荷の総合評価を「強」とする。

イ「特別な出来事」に該当する出来事がない場合

出来事と出来事後の状況の全体を検討して相互評価を行い、心理的負荷の強度を「強」、「中」、「弱」と評価する。

ウ 複数の出来事が関連して生じた場合には、その全体を一つの出来事として評価する。

・「強」+「中」又は「弱」      ⇒ 「強」

・「中」+「中」+(「中」が複数)  ⇒ 「強」又は「中」

・「中」+「中」           ⇒ 「中」

・「弱」+「弱」           ⇒ 「弱」

エ 長時間労働が「強」になる例

・発病直前の1か月に概ね160時間以上の時間外労働を行った場合

・発病直前の3週間に概ね120時間以上の時間外労働を行った場合

・仕事量が著しく増加して時間外労働も大幅に増える(概ね倍以上に増加し、1か月当たり概ね100時間以上となる)などの状況により、業務に多大な労力を費やした場合

・発病直前の2か月に連続して1月当たり概ね120時間以上の時間外労働を行った場合

・発病直前の3か月に連続して1月当たり概ね100時間以上の時間外労働を行った場合

・転勤して新たな業務に従事し、その後1か月概ね100時間の時間外労働を行った場合

※心理的負荷の強度は精神障害を発病した労働者がその出来事と出来事後の状況を主観的にどう受け止めたかではなく、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価する。「同種の労働者」とは、発病した労働者と職種、職場における立場や職責、年齢、経験などが類似する人をいう。

③業務以外の心理的負荷や個体的要因により対象疾病を発病したとは認められないこと

・「業務以外の心理的負荷評価表」(別表2)を用い、心理的負荷の強度を評価する。

・個体的要因については、精神障害の既往歴やアルコール依存症状などがある場合に、その内容等について確認し、顕著な個体側要因がある場合には、それが発病の要因であるといえるかを慎重に判断する。

 

2「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」(令和5年度改正の概要)

(1)業務による心理的負荷評価表について

①具体的出来事の追加・統合

・追加 顧客や取引先、施設利用者から著しい迷惑行為を受けた(カスタマーハラスメント)、感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した

・統合 転勤、配置転換等があった など

② 心理的負荷の強度が「弱」「中」「強」となる具体例を拡充

・パワーハラスメントの6類型すべての具体例、性的指向・性自認に関する精神的攻撃等を含むことなどを明記

・一部の心理的負荷の強度しか具体例が示されていなかった具体的出来事について、他の強度の具体例を明記

(2)業務外で既に発病していた精神障害の悪化について労災認定できる範囲を見直した

・変更前 悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がなければ業務と悪化との間の因果関係を認めていなかった

・変更後 悪化前おおむね6か月以内の「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したと医学的に判断(※)されるときには、業務と悪化との間の因果関係が認められる。(※本人の個体的要因(悪化前の精神障害の状況)、業務以外の心理的負荷、悪化の態様・経緯等を十分に検討)

(3)業務による心理的負荷評価表(別表1)について(労災認定基準改正|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

① 特別な出来事

特別な出来事の類型 心理的負荷の総合評価を「強」とするもの
 

心理的負荷が極度のもの

・生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした

(業務上の傷病による療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴った場合を含む)

・業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死にかかわる重大なケガを負わせた(故意によるものを除く)

・強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた

・ その他、上記に準ずる程度の心理的負荷が極度と認められるもの

極度の長時間労働 ・発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度(例えば3週間におおむね120時間以上)の時間外労働を行った

② 特別な出来事以外の出来事(総合評価の留意事項)

・出来事の総合評価に当たっては、出来事それ自体と、当該出来事の継続性や事後対応の状況、職場環境の変化などの出来事後の状況の双方を十分に検討し、心理的負荷評価表に例示されているもの以外であっても、出来事に伴って発生したと認められる状況や、当該出来事が生じるに至った経緯等も含めて総合的に考慮して、当該出来事の心理的負荷の程度を判断する。

・職場の支援・協力が欠如した状況であること(問題への対処、業務の見直し、応援体制の確立、責任の分散その他の支援・協力がなされていない等)は総合評価を強める要素となる。

・仕事の裁量性が欠如した状況であること(仕事が孤独で単調となった、自分で仕事の順番・やり方を決めることができなくなった。自分の技能や知識を仕事で使うことが要求されなくなった等)は総合評価を強める要素となる。

※具体的出来事の例示事例(参考)

出来事の類型 具体的出来事 平均的な心理的負荷の強度 心理的負荷の総合評価の視点 心理的負荷の強度を「弱」「中」「強」と判断する具体例
 仕事の失敗、過重な責任の発生等 業務に関連し、重大な人身事故、重大事故を起こした  

 

 

・事故の内容、大きさ・重大性、社会的反響の大きさ、加害の程度等

・ペナルティ・責任追及の有無及び程度、事後対応の困難性、その後の業務内容・業務量の程度、職場の人間関係、

職場の支援・協力の有無及び内容

(注)本人に過失がない場合も含む

【「弱」になる例】

・軽微な物損事

故を生じさせたが特段の責任追及・事故対応はなかった

・軽微な物損事故を生じさせ、再発防止のための対応等を行った

【「中」になる例】

・他人に負わせたケガの程度は重度ではないが、事後対応に一定の労力を要した(強い叱責を受けた、職場の人間関係が悪化した等を含む)

【「強」である例】

・業務に関連し、他人に重度の病気やケガを負わせ、事後対応にも当たった

・他人に負わせたケガの程度は重度ではないが、事後対応に多大な労力を費やした(減給、降格等の重いペナルティを課された、職場の人間関係が著しく悪化した等を含む)

(注)他人を死亡させる等の事故は、特別な出来事として評価

3 精神障害の労災発生予防に向けた対応

(1)業務による心理的負荷評価表(別表1)の具体的出来事の事例をテキストにした研修

「具体的な出来事の事例」 ①業務により病気やケガをした、②多額の損失を発生させるなど仕事上のミスをした、③1か月に80時間以上の時間外労働を行った、④退職を強要された、⑤転勤・配置転換等があ った、⑥自分の昇格・昇進等の立場・地位の変更があった、⑦上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた、⑧同僚等から暴行又はひどいいじめ・嫌がらせを受けた、⑨顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた、⑩セクシャルハラスメントを受けた   など

(2)メンタルヘルスケア体制の整備

4つのケア(労働者によるセルフケア、管理監督者によるラインケア、産業医、衛星管理者等による職場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外の機関・専門家による事業場外資源によるケア)が適切の実施されるよう、社内の関係者が相互に連携し、以下の取組を実施

①メンタルヘルスケアの教育研修・情報提供(管理監督者を含む全ての社員)

②職場環境等の改善と把握(メンタルヘルス不調の未然防止)

③メンタルヘルス不調者への気付きと対応(早期発見と適切な対応)

④職場復帰における支援

(3)ハラスメント防止規定等の整備及び周知

パワーハラスメント、セクシャルハラスメント等のハラスメント防止及び排除のための措置、ハラスメント行為に起因する問題が生じた場合に適切に対処するための措置(相談窓口の設置等)を規定した「ハラスメント防止規定」の整備及び研修等による社員への周知

 

 

 

育児・介護休業法の改正

子育てや介護に係る支援制度について、先の国会で育児・介護休業法などの改正案が成立(2024年6月)し充実されたとのことですが、改正された育児・介護休業法などの概要を教えて下さい。

 今回の改正育児・介護休業法の概要

男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充、育児休業の取得状況の公表拡大や介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等の措置を講ずるための改正(公布日:令和6年5月31日)

(1)子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充

 ① 3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に対し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ、労働者が選択して利用できるよ

うにすることを義務付ける。(具体的な措置事例は以下のアからオから事業主が二つを選択)

ア 始業時刻等の変更、イ テレワーク、ウ 短時間勤務、エ 新たな休暇の付与、オ その他働きながら子を養育しやすくするための措置

※事業主が措置を選択し、講じようとするときは、過半数代表者からの意見聴取

 所定外労働の制限(残業免除)の対象となる労働者の範囲を、小学校就学前の子(現行は3歳になるまでの子)を養育する労働者に拡大する。

 子の看護休暇を子の行事参加等の場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生(9歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にある子:現行は小学校就学

前)まで拡大するとともに、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止する。(名称も「子の看護等休暇」に変更)

 3歳になるまでの子を養育する労働者に関し、事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する。

 妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、柔軟な働き方を実現するための仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付ける。

(2)育児休業の取得状況の公表義務の拡大

常時雇用する労働者数が300人(現行1,000人)超の事業主に拡大する。

(3)介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

①労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行うことを事業主に義務付ける。

②労働者等への両立支援制度等に関する早期(40歳等)の情報提供や、雇用環境の整備(労働者への研修や相談窓口の設置等)を事業主に義務付ける。

③介護休暇について、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止する。

④家族を介護する労働者に関し、事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する。

(4)施行期日

令和7年4月1日(ただし上記(1)①及び⑤は公布の日から起算して1年6月以内において政令で定める日)

年収の壁への対応と国の支援策

Q 年収の壁の内容と国の支援策について教えてください。

1 年収の壁とは

社会保険制度では、会社員の配偶者等で定められた基準額に満たない収入の人は、所定の手続きにより被扶養者(第3号被保険者)となり、社会保険料の負担が発生しませんが、一定の収入を超えると保険料負担などが発生し、本人又は世帯の収入が減少します。

このように一定の所得を超えると税や社会保険料負担が発生するため、これを回避する目的で就業調整を行う人の主な基準額は、下図のとおりとなります。

主な年収の壁 分野 壁(基準額)を超えた場合
103万円 税金 配偶者控除・扶養控除の対象外となり、世帯の合計収入が減少する場合が出てくる。
106万円 社会保険料 賃金月額が8.8万円(年収換算で約106万円)を超えると、被保険者数101人(本年10月からは51人)以上の会社で、週20時間以上働く会社員等の被扶養配偶者等は、本人が勤める会社の社会保険への加入対象となり、加入した場合には保険料負担が発生するため、本人の手取収入が減少する場合が出てくる。
130万円 社会保険料 年収で130万円を超えると、会社員等の被扶養配偶者等は、配偶者等が加入する社会保険の被扶養者の対象外となり、配偶者等の社会保険の被扶養者(社会保険料の負担なし)から抜けて、本人が国民健康保険・国民年金等へ加入しなければならなくなる。このため、国民健康保険・国民年金等の保険料負担が発生し、本人の収入が減少する場合が出てくる。
150万円 税金 配偶者特別控除額が段階的に減少⇒世帯の合計収入が減少する場合が出てくる。
各企業が定める金額 配偶者手当 企業によっては配偶者手当が停止⇒世帯の合計収入が減少する場合が出てくる。

 

2 年収の壁への国の支援策(年収の壁・支援強化パッケージ)

次期年金制度改正までの当面の間(令和7年度末まで)の対応(参照年収の壁・支援強化パッケージ|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

(1)106万円の壁への対応

キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)による支援

パート・アルバイトで働く短時間労働者の社会保険への加入に合わせて、本人の手取り収入を減らさない取組を実施する企業に対し、助成金を支給して支援する。

① 対象事業所(特定適用事業所)

ア 2024年(令和6年)9月まで⇒被保険者数が101人以上の事業所

イ 2024年(令和6年)10月から⇒被保険者数が51人以上の事業所

② 主な対象者

ア 令和5年10月以降に雇用した短時間労働者で、週の所定労働時間が20時間以上かつ所定内賃金が月額8.8万円以上でないこと。(学生は対象外)

イ 社会保険加入日の6か月前の日以前から継続して雇用されている。

ウ 社会保険加入日から過去2年以内に同事業所で社会保険に加入していなかった。

③ 対象メニュー(社会保険適用時処遇改善コース)

ア 労働時間延長メニュー⇒6ヶ月で30万円/一人あたり

所定労働時間の延長と賃金の増額をして対象者とし、社会保険に加入させた場合

イ 手当等支給メニュー⇒3年間で最大50万円/一人あたり

労働者の保険料負担の軽減を図るため、賃金の15%以上分の社会保険適用促進手当等を追加支給して対象者とし、社会保険に加入させた場合(社会保険適用促進手当は、

本人負担分の社会保険相当額を上限に、保険料算定基礎となる標準報酬月額・標準賞与額に算定されない。)

※ただし、手当等支給メニューは、週の所定労働時間が20時間以上で働き、月収が8.8万円未満の人を、社会保険適用推進手当の支給により月収8.8万円以上にして社会保

険に加入させることが目的なので、東京都など現行の最低賃金が1,112円以上の地域では、すでに月収8.8万円以上となっているため対象外となる。

ウ ア・イの併用メニュー

1年目 手当等支給メニュー(社会保険適用促進手当の支給)10万円×2回

2年目 労働時間延長メニュー              30万円

④ 各取組を開始する前にキャリアアップ計画書を事前に提出することが必要となる。

(2)130万円壁への対応

社会保険の被扶養者の認定にあたっては、認定対象者の収入が130万円未満であること等を要件としているが、一時的な収入の増加や人手不足による労働時間延長等に伴

う一時的な変動より、年収の見込みが130万円以上となる場合においても、保険者(協会けんぽ等)に対して会社から一時的な収入である旨の「事業主証明」を提出するこ

とにより、被扶養者認定を取り消すことをしないようにする支援

令和6年10月からの社会保険の適用拡大

Q 令和6年10月より、短時間勤務労働者への社会保険の義務的適用が、51人以上100人未満までの事業所に拡大されますが、その具体的な内容について教えて下さい。

1 社会保険(厚生年金保険・健康保険・介護保険)への加入要件について

(1)加入が義務付けられている事業所(適用事業所)

① 法人の事業所(事業の種類を問わない)

② 常時5人以上の従業員を使用する個人事業所(飲食業・理容業・農林水産業など一定の業種を除く)

(2)対象労働者(被保険者)
① 適用事業所に常時使用される労働者(70歳以上は厚生年金保険は対象外)

② 1か月の所定労働日数が上記①の社員の4分の3以上であるパート・アルバイト等の短時間勤務の労働者

③ 上記②以外のパート・アルバイト等の短時間勤務の労働者

2 令和6年10月から対象となる事業所及び被保険者の考え方

※下記(1)~(5)の要件を全て備える人

(1)被保険者数51人~100人の事業所(特定適用事業所)

① 対象となる人数は社会保険の被保険者数

② 直近12か月のうち6か月で50人を上回ったら適用対象(見込みも含む)

③ 法人は同一の法人番号を有する全事業所単位、個人事業主は個々の事業所単位

(2)週の所定労働時間が20時間以上30時間未満で働いている人

契約上の所定労働時間であり、臨時に生じた残業時間は含みません。

ただし、実労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、なお引き続くと見込まれる場合には、3ケ月目から社会保険への加入が必要となります。

(3)賃金月額が8.8万円(年収換算で約106万円)以上で働く人

月額賃金は基本給や諸手当の合計金額(残業代・賞与・臨時的な賃金、通勤手当・精皆勤手当等は含まれません。)

(4)2ケ月を超える雇用見込みがある人

雇用期間が2か月以内であっても、雇用契約書等においてその契約が更新される場合がある旨の明示や、更新により2か月を超えて雇用された実績がある場合を含みます。

(5)学生ではない人

夜間学生や休学中の学生は加入対象

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