東京・足立区の社会保険労務士・行政書士事務所です。

社会保険労務士・行政書士 今井まさみ事務所

労務・社会保険Q&AReference

社会保険の適用拡大について

Q 社会保険の適用について、令和4年10月より短時間勤務労働者へ義務的適用が、事業所規模501人以上から101人以上に適用拡大されましたが、具体的な内容について教えて下さい。

A 社会保険の適用拡大について
1 社会保険への加入要件について
(1)加入が義務付けられている事業所(適用事業所)
① 法人の事業所(事業の種類を問わない)
② 常時5人以上の従業員を使用する一定の業種(飲食業・理容業・農林水産業など)を除く個人事業所
(2)対象労働者(被保険者)
① 適用事業所に常時使用される70歳未満の労働者
② 1週間の所定労働時間及び1ケ月の所定労働日数が、上記①の社員の4分の3以上であるパート・アルバイト等の短時間勤務の労働者

2 これまでの1(2)②以外の短時間勤務労働者への義務的適用
(1)従業員数501人以上の事業所で使用され、一定の条件を満たす人(2016年4月から)
(2)労使合意により、従業員数500人以下の事業所において、一定の条件を満たす人(2017年4月から)
3 年金制度改正法施行により、義務的適用となる短時間勤務労働者
(1)2022年10月からの適用拡大(①~⑤の要件を全て備える労働者)
① 従業員数101人~500人の事業所で使用されている人
・従業員数は社会保険の被保険者数
・直近12か月のうち6か月で100人を上回ったら適用対象
・法人は同一の法人番号を有する全事業所単位、個人事業主は個々の事業所単位
② 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満で働いている人
・契約上の所定労働時間であり、臨時に生じた残業時間は含みません。
ただし、実労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、なお引き続くと見
込まれる場合には、3ケ月目から社会保険への加入が必要となります。
③ 賃金月額が8.8万円以上で働く人
・月額賃金は基本給や諸手当を指します。(残業代・賞与・臨時的な賃金、通勤
手当・精皆勤手当等は含まれません。)
④ 2ケ月を超える雇用見込みがある人
・雇用期間が2か月以内であっても、雇用契約書等においてその契約が更新され
る場合がある旨の明示や、更新により2か月を超えて雇用された実績がある場
合を含みます。
⑤ 学生ではない
・夜間学生や休学中の学生は加入対象
(2)2024年10月からの適用拡大
従業員数51人~100人の事業所で、上記3(1)の②から⑤と同様の条件で使用されている人(従業員数については(1)①と同様の考え方で100人を50人に)

改正育児介護休業法について

Q 改正育児介護休業法の育児休業等に係わる制度の改正点について教えて下さい。

A 育児休業等に係わる制度の主な改正内容

1 令和4年4月1日施行内容

(1)個別の周知・意向確認の義務化

本人又は配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、以下の周知・意向確認を個別に行わなければならない。

① 周知事項

ア育児休業、出生時育児休業(以降「産後パパ育休」という。)に関する制度

イ育児休業、産後パパ育休の申出先

ウ育児休業給付に関すること

エ労働者が、育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

② 個別周知・意向確認の方法(ウ、エは労働者が希望した場合のみ)

ア面談(オンライン面談可)、イ書面交付(郵送可)、ウFAX、エ電子メール

(2)育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務化

育児休業と産後パパ育休の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主は全従業員に対して、以下のいずれかの措置を講じなければならない。

①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施

②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口の設置)

③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供

④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

(3)有期雇用労働者の育児休業取得要件の緩和(就業規則等の見直し)

有期雇用労働者の育児休業(介護休業も同様)取得要件について、①「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」、②「子が1歳6か月に達する日までに労働契約(更新される場合は更新後のもの)の期間が満了することが明らかなこと」のうち、①の要件を廃止。ただし、労使協定の締結により、①の要件を残すことは可能

(4)育児休業等を理由とする不利益取扱い禁止の追加(就業規則等の見直し)

妊娠・出産の申出をしたこと、産後パパ育休の申出・取得、産後パパ育休期間中の就業の申出・同意しなかったこと等を理由とする不利益な取扱いを禁止

 

2 令和4年10月1日施行内容

産後パパ育休と育児休業の概要(改正育児・介護休業法) 赤字は新設・改正部分)

  (1)産後パパ育休(新設) (2)育児休業
対象期間

取得可能日数

子の出生後8週間以内に、4週間(28日)まで取得可能 原則、子が1歳(最長2歳)まで
申出期限 原則、休業の2週間前までだが例外あり 原則、1か月前まで
分割取得 分割して2回取得可能(初めにまとめて申し出ることが必要) 分割して2回取得可能(取得の際に申出)
休業中の就業 労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能 原則、就業不可

 

1歳以降の延長   休業開始日の柔軟化
1歳以降の再取得   特別な事情がある場合に限り再取得可能

(1)産後パパ育休について(就業規則等の見直し)

①子の出生後8週以内の期間に、4週間(28日)まで2回分割して取得可能

②取得可能対象者

ア 育児のために休業することを希望する男性労働者(日雇労働者を除く)

有期雇用労働者は、出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者

イ 労使協定の締結により対象外にできる労働者(育児休業対象除外者と同様)

・雇用された期間が1年未満の者

・申出後8週間以内に雇用関係が終了する者

・週の所定労働日数が2日以下の者

③産後パパ育休申出期限の例外(労使協定の締結)

原則、休業の2週間前だが、労使協定を締結し、一定の措置(1(2)の措置や育休取得が円滑に行われるための業務配分や人員配置の措置を2つ以上、取得に関する定量的な目標設定など)を講じた場合は、1か月以内の期間を申出の期限と定めることが可能となる。

④ 産後パパ育休中に就業させることができる日数の範囲(労使協定の締結)

ア 育休期間の所定労働日数の2分の1以下(1日未満の端数は切り捨て)

イ 育休期間における所定労働時間の合計の2分の1以下

ウ 育休開始予定日または育休終了予定日を就業日とする場合は、当該日の所定労働時間数に満たないものであること。

(2)育児休業について(就業規則等の見直し)

①子が1歳に達するまでの育児休業の取得は理由を問わず1人につき2回まで分割取得可能

②1歳(1歳6か月)以降の育児休業開始日について、子が1歳に達する日の翌日(子が1

歳6か月に達する日の翌日)に限定されていたが、夫婦交代で育児休業を取得する場合、「その配偶者の育児休業の終了予定日の翌日以前の日」を育児休業開始予定日とできるようになる。

③1歳以降の育児休業(子が1歳から1歳6か月までの休業、1歳6か月から2歳までの休業)が、他の子についての産前・産後休業、産後パパ育休、介護休業又は新たな育児休業の開始により育児休業が終了した場合で、産休等の対象だった子等が死亡等したときは、再度育児休業を取得できる。

(3)雇用保険の育児休業給付金について(雇用保険法)

①育児休業給付金の被保険者期間の特例(令和3年9月1日施行済)

育児休業給付金の支給には、育児休業開始前2年間に12か月以上の雇用保険被保険者期間が必要だったが、出産日によってこの要件を満たさない場合でも、産前休業開始日等の前2年間に12か月以上の被保険者期間がある場合には、要件を満たすものとされた。

②産後パパ育休中に受給できる育児休業給付金の新設

ア 受給要件

・育休開始日前2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上ある。(ない場合は就業して いる時間数が80時間以上の完全月が12月以上ある。)

・育休期間中の就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間)以下であること。

イ 支給額

・育休開始時賃金日額(原則、休業開始前6か月間の賃金を180で除した額)×支給日数×67%(育児休業給付支給率67%の上限日数である180日に通算)

ウ 申請期間

出生日の8週間後の翌日から起算して2か月後の月末まで(2回分割して取得した場合は、1回にまとめて申請)

(4)育児休業中の社会保険料の免除(健康保険法、厚生年金保険法、船員保険法)

①育児休業を開始した日の属する月からその休業が終了する月の前日までの月の保険料免除

②育児休業等を開始した日の属する月とその育児休業が終了する日の翌日が属する月が同一であり、かつ当該月における育児休業等の日数が14日以上である場合は、その月の保険

料を免除。なお、賞与の社会保険料は、1か月を超える場合に限り免除。(追加)

 

3 令和5年4月1日施行内容

(1)育児休業の取得状況の公表の義務付け

常時雇用する労働者の数が1,001人以上の事業主は、毎年少なくとも1回以上、育児休業の取得状況の公表をしなければならない。

パワーハラスメントの内容と会社のパワハラ防止に向けた取組みについて

パワーハラスメントの内容と会社のパワハラ防止に向けた取組みについて教えて下さい。

職場におけるパワーハラスメント(以下「パワハラ」という。)について

改正労働施策総合推進法(以下「パワハラ防止法」という)は、2020年6月に施行され、2022年4月1日からは中小企業においてもパワハラ防止対策が義務付けられており、ハラスメントのない職場環境の整備が求められます。

1 パワハラ対策の必要性

(1)社員への影響

①被害者が心身の健康を害し、休職、退職等に至る可能性
②職場環境が悪化する。

(2)会社への影響

①モラルの低下⇒生産性の低下⇒業績の悪化
②社員の定着率の低下⇒優秀な人材の流出
③会社イメージの悪化(企業名公表や報道・SNSによる拡散)⇒人材採用の困難化

(3)労災認定への影響

ハラスメントなどの心理的負荷による精神障害の労災認定については、「心理的負荷による精神障害の認定基準」(強・中・弱の三段階)に基づいて、発病した精神障害が業務上のものと認められるかの判断が行われており、その具体的出来事の中に「パワーハラスメント」も明示されている。

(4)行政監督や訴訟の対象となるリスク

①労働基準監督署による指導、勧告、企業名公表
②加害者の行為に対する使用者責任(代位責任)
③労働契約法などの配慮義務に基づく使用者責任

・労働者の生命、身体の安全を確保するよう配慮する安全配慮義務違反や働きやすい職場環境を整える職場環境配慮違反による損害賠償責任

2 パワハラとは(パワハラ指針より)

パワハラ防止法に基づき策定された「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(以下「パワハラ指針」という)では、パワハラを「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの」で、①から③までの要素を全て満たすものと定義しています。

(1)要件①「優越的な関係を背景とした言動」

行為を受ける者が行為者に対して、抵抗または拒絶できない蓋然性が高い関係に基づいて行われる言動

・基本は職務上の地位の違い(上司対部下)
・人間関係(先輩対後輩、集団対個人)や専門知識、経験から来る様々な優位性が含まれる

(2)要件②「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」

社会通念に照らし、当該行為が明らかに業務上の必要性がない、またはその態様が相当ではないものであること。

・業務上の必要性(行為者の主観的な判断ではない)
・社会通念上の相当性は、発言内容の悪質性(人格を傷つける、侮辱、威圧、過剰な要求)、

言動の回数・期間(繰り返し、長時間にわたる)、手段(暴行・接触、怒鳴る、必要以上の長時間、さらし者的、多人数、アウティング)、受けた・示唆された不利益の程度などの事情を考慮して、社会通念上許容される限度を超えているか否かで判断

(3)要件③「「就業環境が害される」

行為を受けた者が身体的もしくは精神的に圧力を加えられ負担と感じること、または行為を受けた者の職場環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること。(看過できない程度の支障は、一定の客観性があり、平均的な労働者の感じ方を基準として判断)

3 パワハラ行為について

(1)パワハラ6類型(「職場のパワーハラスメント対策に係る自主点検の解説」厚生労働省)

①類型1 身体的・物理的な攻撃 たたく、小突く、物を投げつける など
②類型2 精神的な攻撃 人格否定の言葉、長時間又は繰り返し、威圧的な叱責 など
③類型3 人間関係からの切り離し 無視、仲間外し、情報の遮断 など
④類型4 過大な要求 業務とは無関係な雑用や不要なこと・出来ないことの強制 など
⑤類型5 過少な要求 仕事を与えない、能力や経験とかけ離れた仕事をさせる など
⑥類型6 個の侵害 職場外の動向の監視、プライベートの報告 など

パワハラ防止に向けた会社の取組み

1 パワハラの内容とパワハラの禁止の周知・啓発 (パワハラ指針4(1)イ)

(1)職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を、管理監督者を含む労働者(パートタイム労働者、有期契約労働者、派遣労働者を含む)に周知・啓発すること。

(2)懲戒規定等の策定とその運用(パワハラ指針4(1)ロ)

就業規則など服務規律を定めた文書で、パワーハラスメント行為を行った者について、懲戒規定等に基づき厳正に対処する旨を定め、事務所内への掲示やイントラネット等により管理監督者を含む労働者に周知・啓発する。

2 相談・苦情の応じ、適切の対応するために必要な体制の整備

(1)相談窓口の設置と周知(パワハラ指針4(2)イ)

組織の規模や形態などを考慮し、労働者が相談しやすい相談窓口(内部・外部)を設置・周知することにより、電話、メール、面談等の相談方法により初期段階で対応できるようにする。

(2)適切な相談対応(パワハラ指針4(2)ロ)

相談窓口担当者には、十分な対応スキルを持てるよう、教育や研修を実施などにより、相談に対しその内容や状況に応じ適切に対応できるようにする。

3 職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応

(1)事実関係の確認(パワハラ指針4(3)イ)

相談の申出後において、相談者の受け止めなどの認識に配慮した上で、相談者及び行為者の双方から、事実関係を迅速かつ正確に確認する。

(2)被害者に対する配慮の措置(パワハラ指針4(3)ロ)

事案の内容や状況に応じ、行為者から被害者への謝罪、行為者に対する注意・指導、被害者と行為者を引き離すための配置転換など

(3)行為者に対する適正な措置(パワハラ指針4(3)ハ)

人事労務部署とパワハラ発生部署とで連携し、就業規則の内容や裁判例等の要素を踏まえた対応

(4)再発防止に向けた措置(パワハラ指針4(3)二)

パワハラが再発することがないよう、行為者のみならず職場全体に改めてパワハラ禁止等を周知・啓発する。

 

【最低賃金法】最低賃金の制度のしくみと内容について

令和3年10月より、東京都の最低賃金は1,013円から28円引き上げられ、1,041円になりました。昨年度は引き上げがありませんでしたが、その制度の仕組みと内容について教えて下さい。

最低賃金は最低賃金法により、事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されるもので、常用・臨時・パートタイマー・アルバイト等の属性、性、国籍及び年齢の区別なく適用されます。派遣労働者は、派遣先の事業場に適用される最低賃金となります。

(1)最低賃金は時間給で定めます。(最低賃金法第3条)

月給の場合は、以下の計算により時間給を求めます。

上記の計算に算入しない賃金は以下のとおりです。

① 臨時に支払われる賃金及び一月を超える期間ごとに支払われる賃金
② 所定労働時間をこえる時間の労働(時間外労働)に対して支払われる賃金
③ 所定労働日以外の日の労働(休日労働)に対して支払われる賃金

(2)地域別最低賃金について(最低賃金法第9条)

最低賃金は一定の地域(都道府県)ごとに、地域の労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定めなめればならない(地域別最低賃金の原則)とされ、最低賃金審議会の意見を聴いて、国は必要があると認めるときは改正の決定をしなければならないとされています。2021年10月1日より、一都三県の最低賃金額は以下のとおり改正されています。(括弧内の数字は、改正前の地域別最低賃金)

①東京都 1,041円(1,013円)
②神奈川県 1,040円(1,012円)
③埼玉県 956円(928円)
④千葉県 953円(925円)

(3)周知義務について(最低賃金法第8条)

使用者は、当該最低賃金の概要を、常時作業場所の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければならないとされています。

(4)最低賃金の減額の特例について(最低賃金法第7条)

使用者が都道府県知事の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額が、最低賃金として適用されます。
①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
②試しの使用期間中の者
③職業訓練のうち、職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者であって厚生労働省令で定めるもの
④軽易な業務に従事する者その他厚生労働省令で定める

【改正高年齢者雇用安定法】定年年齢や再雇用職員の雇用年齢について

令和3年4月から、定年年齢や再雇用職員の雇用年齢を70歳まで引き上げることが法律で求められていると聞いております。その制度の内容と今後の課題について教えて下さい。

高年齢者雇用安定法の目的は、「定年の引き上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もって高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与すること」とされています。

1 改正高年齢者雇用安定法の内容

65歳までの定年引き上げや継続雇用制度の導入などこれまでの雇用措置(カ・キ・ク)に加え、就業確保措置として、定年や継続雇用の70歳までの引き上げなどの雇用措置(ア・イ・ウ)や新たに創業支援等措置(エ・オ)を努力義務としている。

 

2 改正高年齢者雇用安定法の具体的な対応(指針・Q&Aより)

上記2アからオの措置を選択(複数も可)し、就業規則の改正等を行うとともに、職員への周知を図る。

(1)雇用措置(イの継続雇用制度の場合)について
① 対象者を限定する基準を設けることも認められる。
過去の人事考課や出勤率、健康診断結果など具体的・客観的な基準を示すことが必要で、「会社が必要と認めた者」や「上司の推薦がある者」などの抽象的な基準は認められない。

② 雇用契約を70歳まで継続しないことも認められる。
「心身の故障のため業務に耐えられないと認められる」、「勤務状況が著しく不良で、引き続き従業員としての職責を果たし得ない」ことなどを就業規則に記載

③ 継続雇用先について、自社や子会社・関連会社等の特殊関連事業主に加えて、それ以外の他社も含まれる。(他の事業主との間で契約締結が必要)

(2)創業支援等措置について

① 創業を希望する高年齢者等との継続的な業務委託契約の締結
・個人とのフリーランス契約への資金提供
・個人の企業支援 など

② 社会貢献活動参加への資金提供(有償)
・事業主が自ら実施する事業
・事業主が委託、出資(資金提供)その他の援助を行う団体が実施する事業 など

③ 必要事項が記載された実施計画書を作成し、過半数労働組合等の同意を得た上で、掲示・備え付けや電子媒体等で周知するとともに、希望する高齢者との書面等による契約を締結

 

3 70歳までの継続雇用制度導入の課題と対応

厚生労働省の「高齢者の雇用状況」(R1.11.22)によれば、65歳までの雇用確保措置の選択割合は継続雇用制度が77.9%と最も高く、今後も高齢者雇用確保措置の中で導入比率が高いのは、70歳までの継続雇用制度になることが想定されます。

(1) 課題

① 安全面・健康面への配慮の増大
ア.安全面では、厚生労働省の「労働者死傷病報告書」(令和元年)によると、労働災害による休業4日以上の死傷者数で、「60歳以上」の高年齢労働者が被災する割合が、過去10年間で8ポイント(18%から26%)増化し、死傷災害全体の約4分の1を占めている。聴力、視力、平行感覚、筋力等の低下が見られ、転倒等の労働災害の発生に影響
イ.健康面では、定期健康診断の有所見率などから、成人病等の慢性疾患の増加

② 定年退職後のモチベーションの低下
ア.活用面 ⇒ 職責や期待の低下など
イ.処遇面 ⇒ 賃金の一律減とその後変わらない賃金決定など

(2)対応

① 高齢者が働きやすい職場環境の実現
ア.危険源の特定等のリスクアセスメントの実施
身体機能の低下による労働災害発生リスクを、災害事例やヒヤリハットなどから洗い出し、優先順位の高いものから対策を講じ、改善して行く。
⇒身体機能の低下を補う施設、設備、装置等の改善・導入

イ.健康経営への取組
社員の健康に配慮することは、経営面においても大きな成果が期待できるとの基盤に立って、健康管理を経営的な視点から考え戦略的に実践
⇒健康経営により、健診結果を活用した社員の「食」・「運動」・「心の健康」への配慮など健康づくりの推進

② やる気(働きがい)が出て、それが報われる仕組みの構築
ア.役割(職責)や働き方に応じた評価制度の導入
・期待される役割⇒「知識・スキル・ノウハウの伝承」・「後輩の指導」・「担当者としての成果」などの項目を具体化し、役割を明確化する。
・働き方の柔軟性⇒週4日や1日6時間などの短時間勤務制の導入
⇒役割や働き方に基づいた職務評価などにより、モチベーションの向上を図る。

イ.処遇(賃金)の適正化
仕事の内容・評価(成果)・発揮能力に応じた賃金制度の導入
⇒熟練技術手当や評価の昇給・賞与への反映により、モチベーションの向上を図る。

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