労務・社会保険Q&AReference
【出入国管理法】技能実習制度について
現在の「技能実習制度」とはどのような制度ですか?
技能実習制度は、国際貢献のため、開発途上国等の外国人を日本で一定期間(最長5年)に限り受け入れ、OJTを通して技能を移転する制度。技能実習生は入国直後の講習期間以外は、雇用関係のもと、労働関係法令等が適用されており、30年6月時点で約28万人在留している。
(1)受入機関
①企業単独型
日本の企業等が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れ技能実習を行う。
日本の受入企業は海外企業等と雇用契約を結び労働者を受け入れ、入国管理局(2019年4月より「出入国在留監理庁」)に入国許可を申請(在留資格は技能実習1号)する。入国許可が下りたら、技能実習に関する事務を行う外国人技能実習機構(以下「機構」という。)に実習計画の認定を受け技能実習を行う。
②団体監理型
非営利の監理団体(事業協同組合、商工会等)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等で技能実習を行う。監理団体は機構による調査を経て、国から監理団体としての許可と実習計画の認定を受ける。監理団体は送り出し国の機関と契約を結び労働者を受け入れ、入国管理局に入国許可を申請(在留資格は技能実習1号)する。傘下の実習生受入企業は監理団体の指導・支援を受けながら技能実習を行う。
(2)技能実習の流れ
①在留資格:技能実習1号(1年目)在留資格取得
企業単独型の受入企業又は監理団体で原則2ケ月の講習(雇用関係なし)の後、受入企業で実習(雇用関係あり)を行う。(基礎級の学科試験及び実技試験に合格した者 ②へ)
②在留資格:技能実習2号(2年目、3年目)在留資格の変更又は取得
受入企業で2年間の実習(一旦帰国し、所定の実技試験に合格したもの ③へ)
③在留資格:技能実習3号(4年目、5年目)在留資格の変更又は取得
受入企業で2年間の実習(帰国)(今後、特定技能1号への道)
(3)就労する外国人に対する労働法規・社会保障法規
①労働法規
労働基準法第3条(使用者は労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取り扱いをしてはならない。)
・労働者災害補償保険法、最低賃金法、労働安全衛生法の適用
②社会保障法規
・雇用条件等により雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法の適用
【出入国管理法】外国人の在留資格
「特定技能」という在留資格が新設され、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法(以下「入管法」という。)が先の臨時国会で改正され成立しましたが、そもそも外国人の在留資格にはどのような種類がありますか?
入管法にいう「外国人」とは、日本の国籍を有しない者をいい、日本国に在留する外国人に係る法的地位として入管法が28種類の在留資格を定めています。
外国人が上陸許可又は在留資格の変更や更新許可を受けて日本に適法に在留するためには、1個の在留資格とそれに対応する1個の在留期間が決定されることを必要としています。在留資格の分類としては以下の就労可能資格と就労不能資格に分けることができます。
【1】就労可能資格
収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことが入管法上認められる在留資格
1.業務限定就労可能資格(一定範囲に限って就労可能)
ア 上陸許可基準が定められているもの
高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、技能実習
ここに「特定技能1号」と「特定技能2号」を創設
イ 上陸許可基準が定められていないもの
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、特定活動(経済連携協定に基づく外国人看護師、看護福祉士候補者など)の一部
2.無制限就労可能資格
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、
【2】就労不能資格
ア 上陸許可基準が定められているもの
留学(年平均で週28時間までの就労は可能)、研修、家族滞在
イ 上陸許可基準が定められていないもの
文化活動、短期滞在、特別活動の一部
【3】在留期間
それぞれの在留資格により、無制限、5年、4年、3年、2年、1年、6月、3月などの期間が定められています。
【4】外国人労働者に占める割合の多い在留資格(2017年10月末時点)
永住者・日本人配偶者等 約46万人(35.9%)、留学生 約26万人(20.3%)、技能実習生 約26万人(20.2%)
【5】在留資格の喪失
日本に在留する外国人が在留資格を失うと、入管法上、退去強制事由に該当し、日本から退去強制される立場となり、日本において合法的に滞在することはできなくなります。
【労働安全衛生法】産業医の機能強化と面接指導等
2019年4月に施行される改正労働安全衛生法(労働安全衛生規則)の長時間労働に対する健康確保措置の内容について教えて下さい。
1.産業医機能の強化
(1)産業医に対する情報提供(労働安全衛生法13条4項)
長時間労働者の状況や労働者の業務の状況など産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報提供を事業者に義務付け。
(2)産業医による勧告(労働安全衛生法13条5項)
産業医から事業者に対し、労働者の健康管理等に必要な勧告ができ、事業者は当該勧告を尊重する義務が課される。
2.面接指導等
(1)面接指導の要件(労働安全衛生法第66条の8)
休憩時間を除き、一週間あたり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間(休日労働を含む)が、一月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合、医師による面接指導を事業者に義務付け(改正前は100時間超)
事業者は80時間を超えた労働者に対し、速やかにその情報を通知しなければならない。
(2)労働時間の把握義務(労働安全衛生法第66条の8の3)
労働時間の状況を省令で定める方法(タイムカードによる記録、コンピュータ等の使用時間の記録等の客観的な方法その他適切な方法)により把握し、その記録を3年間保存しなければならない。(対象者に管理職や裁量労働制適用者を含む)
※産業医とは
労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導や助言を行う医師。
労働安全衛生法では、労働者数50人以上の事業場においては、産業医の選任が事業者の義務となっている。
【改正労働基準法】一定日数の年次有給休暇の確実な取得
改正された労働基準法の年次有給休暇5日の付与義務について教えて下さい。
労働基準法第39条7項では、「使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならない」とされており、時季指定にあたっては、労働者の意見聴取義務・意見尊重の努力義務が設けられております。
なお、労働者による時季指定分(同条5項)及び計画年休による付与分(同条6項)は、同条7項による時季指定分の5日から差し引いてよい(同条8項)とされています。
また、年次有給休暇の取得状況を把握するために、年次有給休暇の管理簿作成義務(3年間保存)が設けられました。
【労働者派遣法】有期雇用派遣労働者に対する派遣期間の制限と雇用安定措置
2015年に改正された労働者派遣法が施行後3年を経過し、今年の10月から有期雇用派遣労働者への派遣期間の制限と雇用安定措置が適用になりますが、派遣先・派遣元事業所における留意点等について教えて下さい。
(1)派遣期間の制限
派遣元に期間の定めのある労働契約で雇用されている有期雇用派遣労働者については、
①派遣元が同一の派遣労働者を派遣先の同一の組織単位に継続して派遣できる期間は3年とする。
かつ
②派遣先が同一の事業所において、労働者派遣を受け入れることができる期間は3年とし、派遣先がこれを超えて継続して労働者派遣を受け入れようとするときは、この延長のたびに(延長の上限期間はその都度3年)、派遣先の過半数労働組合等から意見を聴取し、異議が述べられたときには延長の理由等を説明しなければならない。
(2)雇用安定措置
有期雇用派遣労働者が派遣先の同一の組織単位の業務に3年間従事した場合、派遣元は、当該有期雇用派遣労働者に対し、以下のいずれかの措置を講じなければならない。
①派遣先への直接雇用の依頼
②新たな派遣先での就業機会の提供(その条件は合理的なものに限る)
③派遣元での無期雇用の機会の提供(派遣労働者以外の労働者としての雇用)
④その他教育訓練であって、雇用の安定に特に資すると認められる措置
※厚生労働大臣は、この義務に違反する派遣元事業主に、指導・助言・指示を行うことができ、この指示にも違反する場合には労働者派遣事業の許可を取り消すことができる。