働き方改革への対応Business Outline
「働き方」は「暮らし方」そのものであり、働き方改革は、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方そのものに手を付けていく改革である。
多くの人が、働き方改革を進めていくことは人々のワーク・ライフ・バランスにとっても、生産性にとっても好ましいと認識しながら、これまでトータルな形で本格的改革に着手することができてこなかった。働き方改革は日本経済再生に向けての最大のチャレンジである。
(「働き方改革実行計画」(2017年3月28日閣議決定)より)
「働き方改革実行計画」の主な項目
①同一労働・同一賃金など非正規雇用の処遇改善
②賃金引上げと労働生産性の向上
③罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
④テレワークなど柔軟な働き方がしやすい環境整備
⑤女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
⑥病気の治療と仕事の両立
⑦子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
⑧付加価値の高い産業への転職・再就職支援
⑨誰にでもチャンスのある教育環境の整備
⑩高齢者の就業促進
⑪外国人材の受入れ
2018年6月29日に、「労働基準法」「労働時間等設定改善法」「雇用対策法」「労働安全衛生法」「パートタイム労働法」「労働契約法」「労働者派遣法」「じん肺法」の8つの労働法からなる「働き方改革関連法」が成立しました。
今後は、罰則付き時間外労働の上限規制など長時間労働の是正、同一労働・同一賃金など非正規雇用の処遇改善、フレックスタイム制の拡大など柔軟な働き方がしやすい環境整備等について、具体的に取り組んでいかなくてはなりません。
御社に必要な働き方改革への取組を支援いたします。
働き方改革関連法の主なポイント
【1】長時間労働の是正
ア 残業時間の罰則付き上限規制(労働基準法、労働安全衛生法)
原則 月45時間、年360時間
上限 単月100時間、複数月平均80時間(ともに休日労働含む)
年 720時間、月45時間超は年6月まで
イ 勤務間インターバル導入の努力義務(労働時間等設定改善法)
ウ 産業医の権限強化(労働安全衛生法等)
面接指導の対象 時間外労働100時間➡80時間
エ 有給休暇消化の義務化(労働基準法)
10日以上の有給休暇を有する労働者へ、5日を時季指定して付与
オ 中小企業の割増賃金率の見直し(労働基準法)
60時間を超える残業に対する割増率50%以上
【2】待遇格差の是正
カ 同一労働・同一賃金の実現(パートタイム労働法、労働者契約法、労働者派遣法)
・パートタイム、有期雇用のいずれにも、均等待遇、均衡待遇の双方が適用
・労働者から求めがあったときに、「通常の労働者との待遇の相違の内容及び理由」を説明する義務
【3】多様な働き方の実現
キ「高度プロフェッショナル制度」の創設
時間外労働規制、休憩、割増賃金に関する規定が適用除外
ク フレックスタイム制の拡大
清算期間の上限を1か月から3か月に延長
※施行期日 2019年4月 ただし、アは大企業2019年4月、中小企業2020年4月から適用、オは2023年4月から適用、カは大企業・派遣事業者2020年4月、派遣を除く中小企業2021年4月から適用
働き方改革が必要とされている背景
※平成27年値以前は実績値、以降は推計値(内閣府28年度高齢社会白書ほか)
【1】少子・高齢化の進展
労働人口の減少➡女性や高齢者、外国人等の更なる労働参加の必要性
【2】技術革新とグローバリゼーション
これまでの働き方の見直し➡新たな付加価値の創造
働き方改革への具体的な対応
【1】働き方改善計画の作成
① 現状把握(仕事の棚卸)と課題整理➡②改善の方向性(ア新たな業務で補完 イ従来の業務の効率化 ウ業務の廃止)➡③実行策の具体化(ア簡素化 イ移管 ウ自動化 エ標準化 オ集約化)
【2】就業規則の作成・改訂
① 事業所の労働時間、服務規律や慣行等の現状を細かく把握し整理
② 1日8時間、1週間40時間の法定労働時間を超える時間外労働、または法定休日に休日労働させる場合は、「36協定」を締結し労働基準監督署に届出
③ コンプライアンス上問題ないか、さらに「職場環境の改善」、「労働生産性の向上」など改善したい点も含めて内容を検討
④ 契約社員やパートタイム労働者など非正規労働者の割合が増えている中、正社員との不合理な格差に対する訴訟なども増えていることから、非正規労働者に対する就業規則など雇用形態や就業形態に応じた就業規則の作成
【3】行政等の支援
① 東京働き方改革推進支援センター
非正規雇用労働者の処遇改善、労働時間 の短縮、生産性向上による賃金引上げ、人材不足の緩和等に向けた取組に対する相談や専門家派遣
② 東京都社会保険労務士
「労務診断ドック」や「働き方改革取り組み宣言」への取組支援など
【4】助成金の活用
助成金とは、国(厚生労働省)や都道府県等が施策を推進する目的(失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大、労働者の能力開発及び向上など)のために、民間の事業主や団体等を支援するために支給する公的な金銭であり、財源は雇用保険料の一部から充てられる。
支給要件の中に、申請に係る規定内容について、就業規則への定めが必要な場合がある。
- 両立支援助成金(父親の育児休業や育児目的休暇取得、仕事と介護の両立支援)
- キャリアアップ助成金(有期雇用労働者等の賃金規定増額改定、法定外健康診断規定)など
「健康経営」の取り組み
(1)「健康経営」とは
従業員の健康を重要な経営資源と捉え、健康促進に積極的に取り組む企業経営スタイル。従業員の健康増進・労働衛生等の取組にかかる経費をコストではなく投資として考え、従業員の活力や生産性の向上、組織の活性化などにつなげること。結果的に会社の業績や企業価値の向上が図れると期待されています。
(2)「健康経営」を始めるには
「健康企業宣言」により社内外に健康経営を行うことを宣言し、取組内容を達成すると協会けんぽ等が「健康優良企業」として認証します。認証されると提携金融機関の低金利融資や自治体の公共調達における加点等の優遇措置があります。
ワークライフバランスの取り組み
健康経営実現のための手法の一つに『ワークライフバランス』の導入が挙げられます。
『ワークライフバランス』とは、従業員がやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、各人のステージに応じた多様な生き方が選択でき実現できる、いわば、仕事(ワーク)と生活(ライフ)の調和(バランス)の状態を維持しながら多様な人材が働きやすい環境づくりを目指す施策のことです。
【ワーク・ライフ・バランスで期待される効果~企業側】
1.生産性の向上による時間外労働時間の削減
ワークライフバランスの導入で、時間に依存した働き方から、業務配分や仕事の進め方を見直し、業務の効率をアップさせ残業時間の削減を目指します。
2.優秀な人材の確保と定着
ワーク・ライフ・バランスの取り組みがされている企業は、採用面でも有利に働き、優秀な人材確保につながります。仕事と生活の充実を果たし、モチベーションを維持できる環境が整っていれば、離職防止にもつながっていきます。
3.メンタルヘルス不調者の減少
従業員の心身の健康度が向上することから、メンタルヘルス不調による長期休職率や離職率が低下し、生産性の向上につながります。
【ワーク・ライフ・バランスで期待される効果~従業員側】
1.仕事と家庭の両立
残業が減り、家庭生活の時間が増え、心にゆとりができる時間を設けることができ、職場においても家庭においても、自分の力を発揮できる環境がつくられます。
2.スキルアップによる自己実現
時間に余裕ができることで、自己啓発や資格取得に取り組むことができるようになります。獲得したスキルを仕事に活かすことで、企業にも個人にも大きなメリットになります。
3.心身の健康維持
長時間労働から解放され、心と身体を自分自身でコントロールすることができるゆとりができます。